四月の胃が、教えてくれたこと——ストレスは「考えすぎ」じゃなかった

新年度が始まって、もう半月が過ぎました。

この時期、なんとなく胃が重い。食欲はあるようなないような。朝起きたときに、身体の芯がどんよりしている。そんな感覚が続いていて、正直「また来たか」と思いました。

毎年のことなんです。四月の半ばを過ぎると、決まって胃のあたりがしくしくする。仕事の環境が変わったわけでも、特別忙しくなったわけでもない。でも、身体のほうが先に「四月」を感じ取っている。そんなふうに思えるのは、養生を学んでからのことです。


西洋医学なら「ストレス性胃炎」で終わる話

病院に行けば、おそらく「ストレスですね」と言われるでしょう。胃カメラを撮って異常がなければ、「機能性ディスペプシア」という診断名がつくかもしれません。胃酸を抑える薬が処方されて、「あまり考えすぎないようにしてくださいね」と言われる。

以前の自分なら、その言葉を真に受けて「考えすぎないようにしなきゃ」と、さらに自分を追い込んでいたと思います。でも「考えすぎないようにする」って、実はものすごく難しい。考えないように考えること自体がストレスになる、あの悪循環です。


東洋医学が教えてくれた「肝と脾の関係」

神山先生に教わった言葉で、今も折に触れて思い出すものがあります。

「ストレスで胃が痛くなるのは、”肝”が”脾”を攻めているんです」

東洋医学では、精神的な緊張やストレスは「肝(かん)」の領域です。肝は気(き:身体を動かすエネルギー)の巡りを司る臓で、ストレスがかかると肝の気が滞ります。これを「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と言います。

そして、肝と脾(ひ:消化吸収を司る臓)には「相克(そうこく)」という関係があります。肝の気が暴れると、脾が抑えつけられてしまう。これが「肝脾不和(かんぴふわ)」——つまり、イライラや緊張が胃腸の不調として現れる仕組みです。

「考えすぎ」が問題なのではなく、気の巡りが滞っていることが問題。そう捉え直すだけで、ずいぶん楽になりました。「考えるな」ではなく「巡らせよう」。それが養生の発想です。


今朝やってみた、三つの小さな養生

今朝、胃の重さを感じたとき、まず深呼吸をしました。阿久沢先生に教わった腹式呼吸です。鼻から四秒吸って、口から八秒かけてゆっくり吐く。これを五回。特別なことではないのですが、吐く息を長くすることで副交感神経が優位になり、肝の気の巡りが少し楽になる感覚があります。

次に、朝食を見直しました。今朝は白粥(しろがゆ)に梅干し、そして少しの生姜の千切りを添えました。白粥は脾を助ける養生食の基本です。梅干しの酸味は肝に帰経(きけい:その食材が働きかける臓)し、生姜の辛味は気を巡らせます。「肝を落ち着かせながら脾を助ける」、そんな朝ごはんです。

最後に、散歩に出ました。この時期の朝の空気は、まだ少しひんやりしていて気持ちがいい。十五分ほど、近所をぐるりと歩くだけ。東洋医学では「肝は疏泄(そせつ)を主る」と言います。疏泄とは、のびやかに広がること。身体を動かし、外の空気を吸うことで、滞った肝気がふわっとほどける。歩き終わったあと、胃の重さが少し和らいでいることに気づきました。


「治す」のではなく「整える」を続ける日々

家内がCPSP(脳卒中後疼痛)と向き合い始めたとき、私たちは「治す」という言葉にずいぶん振り回されました。治らないと言われた痛みに対して、「治す」を目標にすると、毎日が失敗の連続になってしまう。

でも、「整える」に切り替えたとき、景色が変わりました。今日の胃の重さも、同じです。治すべき病気ではなく、身体が発しているサインとして受け取る。そして、できることを一つずつやってみる。

四月の胃の重さは、身体が「ちょっと立ち止まって」と言っているのかもしれません。その声を聞けるようになったことが、養生を学んで一番よかったことだと思っています。

明日もきっと、小さな養生を一つ。それでいいのだと思います。


※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。



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「ストレスで胃が痛い」は気のせいじゃない?——東洋医学が教える心と内臓のつながり

Q. 仕事のストレスがたまると、決まって胃が痛くなります。でも病院で検査しても「異常なし」と言われます。これって気のせいなのでしょうか?

「ストレスがたまると胃が痛くなる」「緊張すると食欲がなくなる」——こうした経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。病院で検査を受けても特に異常は見つからない。「気のせいですよ」「ストレスですね」と言われて、モヤモヤした気持ちで帰ってきた経験はありませんか?

でも、その痛みは決して「気のせい」ではありません。東洋医学の視点から見ると、心と内臓のつながりは驚くほど明確に説明できるのです。


西洋医学では「機能性ディスペプシア」と呼ばれます

西洋医学では、検査で異常が見つからないのに胃の不快感や痛みが続く状態を「機能性ディスペプシア」と呼びます。胃の器質的な病変はないけれど、胃の働き(機能)に問題が生じている状態です。

治療としては、胃酸を抑える薬や胃の動きを改善する薬、場合によっては抗不安薬が処方されることもあります。しかし、「なぜストレスが胃に影響するのか」という根本的なメカニズムについては、「自律神経の乱れ」という説明にとどまることが多いのが現状です。


東洋医学では「肝と脾(胃)の関係」で説明します

東洋医学では、ストレスと胃の痛みの関係を「肝脾不和(かんぴふわ)」という概念で説明します。これは、肝(かん)と脾(ひ)という二つの臓腑の調和が乱れた状態を指します。

肝は「気の巡り」を司る

東洋医学でいう「肝」は、西洋医学の肝臓とは少し異なります。肝は全身の「気」の流れをスムーズにする働き——「疏泄(そせつ)」という機能を持っています。感情の安定や、ストレスへの対応も肝の役割です。

ストレスがたまると、この肝の疏泄機能が滞ります。これを「肝気鬱結(かんきうっけつ)」といいます。いわば、気の巡りが渋滞を起こしている状態です。

脾は「消化吸収」を司る

一方、「脾」は消化吸収を担当する臓腑です。食べ物から栄養を取り出し、全身に送り届ける働きをしています。東洋医学では、脾と胃は表裏一体の関係にあり、合わせて「脾胃(ひい)」と呼ばれることも多いです。

肝の乱れが脾胃を攻撃する

五行説では、肝は「木」、脾は「土」に属します。木は土を抑える関係(相克)にあるため、肝の気が滞ると、その矛先が脾胃に向かいやすいのです。

これが「肝気犯胃(かんきはんい)」——肝の乱れた気が胃を攻撃する——という状態です。イライラすると胃が痛くなる、緊張するとお腹の調子が悪くなる。これは気のせいではなく、肝と脾胃の関係で起こる、れっきとした身体の反応なのです。


今日からできる養生法

1. 深呼吸で肝の気を巡らせる

イライラしたり、胃が痛くなったりしたら、まず深呼吸を。息を吐くときに、身体の中の滞った気が外に出ていくイメージを持ちましょう。吸うときの倍の時間をかけてゆっくり吐くのがコツです。

2. 柑橘類の香りを活用する

肝の気を巡らせるのに効果的なのが、柑橘類の香りです。みかんやレモン、ゆずなどの皮に含まれる香り成分には「理気(りき)」——気の巡りを整える——作用があります。アロマオイルを使ったり、食後にみかんを食べたりするのも良いでしょう。

3. 「腹八分目」と「よく噛む」を意識する

ストレスで弱った脾胃をいたわるには、消化に負担をかけないことが大切です。食事は腹八分目を心がけ、一口30回を目安によく噛んで食べましょう。脾胃の仕事を減らしてあげることで、回復を助けます。

4. 軽い運動で気を動かす

気は動いているのが正常な状態です。デスクワークで同じ姿勢が続くと、気も滞りやすくなります。1時間に1回は立ち上がってストレッチをしたり、可能であれば昼休みに10分でも歩いたりすることで、気の巡りを促しましょう。


まとめ:胃の痛みは「身体からのサイン」

ストレスで胃が痛くなるのは、「気のせい」でも「弱いから」でもありません。肝と脾胃という二つの臓腑の関係から起こる、身体の自然な反応です。

大切なのは、この痛みを「身体からのサイン」として受け止めること。「もう少しゆっくりしなさい」「気を巡らせなさい」という、身体からのメッセージなのです。

病気を「治す」のではなく、身体を「整える」。その視点を持つことで、ストレスと胃の痛みとの付き合い方が、少し楽になるかもしれません。


※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。

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