夜型生活で1限欠席が続く学生——現場で感じる「あるある」
後期が始まって数週間。午後の授業には出てくるのに、1限になると決まって姿が見えない学生がいる。出席簿を見ると、欠席は特定の曜日や時限に偏っている。「夜型生活で朝が起きられないだけだろう」と思いつつも、このまま単位を落としてしまわないか、声をかけるべきか見守るべきか、判断に迷う場面ではないでしょうか。
学生支援や教務、ゼミを担当されている先生方なら、毎年この時期に同じような学生と出会っているはずです。1限欠席は「怠け」と見られやすい一方で、心身のコンディション低下を知らせる早期サインであることも少なくありません。この記事では、夜型生活と1限欠席を東洋医学の視点から読み解き、大学・教職員にできる支援をまとめます。
一般には「睡眠不足」「意志の問題」と考えられています
西洋医学や一般的な見方では、夜型生活による朝の欠席は、主に次のように整理されます。
夜遅くまでスマートフォンやゲームを使うことで体内時計が後ろにずれ、朝に眠気が強く出る。睡眠時間が足りず、日中の集中力が落ちる。生活リズムの乱れが続くと、気分の落ち込みや不安につながることもある。そのため対策としては「早く寝る」「朝に光を浴びる」「起床時刻をそろえる」といった生活指導が中心になります。
もちろん、これらは大切な基本です。ただ、「分かっているけれど起きられない」という学生にとっては、正論だけでは届かないことがあります。本人も困っているのに、責められていると感じてしまうからです。
東洋医学の視点——夜更かしは「腎」と「肝」を消耗させる
東洋医学では、夜は身体が休んで力を蓄える時間と考えます。ここで大きな役割を担うのが、次の二つの臓です。
腎(じん)——生命力の貯金箱
腎は、成長や活力のもとになる「精(せい)」を蓄える臓とされます。いわば身体のバッテリーや貯金のようなものです。夜更かしが続くと、この貯金を毎日少しずつ取り崩すことになり、朝になっても力が湧かない「腎の消耗」の状態に近づきます。若い学生は貯金が多いため、しばらくは無理がききます。けれど、試験・課題・アルバイト・就活準備が重なる後期は、取り崩しが加速しやすい時期です。
肝(かん)——夜に血を蓄え、気を巡らせる
肝は「夜、横になると血を蓄える」と考えられています。夜更かしで肝が休めないと、血が十分に養われず、気の巡りも滞ります。すると、朝のぼんやり感、イライラ、寝つきの悪さ、目の疲れなどが出やすくなります(肝の気の滞り、いわばストレスで気の流れが詰まった状態です)。
秋という季節の影響
秋は空気が乾き、夜が長くなる季節です。東洋医学では「肺が乾きやすい」時期とされ、夏の疲れが残ったまま後期を迎えると、気や陰(身体を潤す力)が不足しがちです。1限欠席の背景には、単なる夜更かしだけでなく、夏から続く疲れの蓄積が隠れていることがあります。
つまり、1限に出てこない学生は、意志が弱いのではなく「夜の回復がうまくいっていない」可能性があります。この見方は、学生を責めずに話を始めるための手がかりになります。
夜型生活と1限欠席に、大学・教職員ができる支援
教職員にできる声かけと授業での工夫
声かけでは、「なぜ来ないのか」と原因を問い詰めるより、体調と生活の様子を聞くことから始めると、学生が話しやすくなります。たとえば次のような言い方です。
- 「最近、朝はきつそうだね。夜はどのくらい眠れている?」
- 「1限の日だけ来にくいみたいだけれど、何か理由がありそうかな」
- 「来られた日はちゃんと見ているよ。無理のない範囲で、一緒に考えよう」
授業やゼミでは、次のような工夫が考えられます。
- 1限の初回数分を、出席確認と軽い雑談にあてて入りやすい雰囲気をつくる
- 配布資料やスライドを後から見られるようにし、欠席後に戻りやすくする
- 欠席が2〜3回続いた時点で、早めに個別に連絡する
学内連携と企画のアイデア
保健センターや学生相談室と連携し、「睡眠と朝のコンディション」をテーマにした健康講座を開くのも一案です。学食では、朝に食べやすい温かい汁物や、黒ごま・くるみ・山芋など腎を養うとされる食材を使った「朝ごはんメニュー」を企画すると、実践につながりやすくなります。
学生に伝えられるセルフケア
学生には、費用がかからず一人暮らしでも続けやすい方法を伝えてみてください。
- 就寝の1時間前に、画面を見る時間を減らす。難しければ、まず15分だけ早めてみる
- コンビニで買える温かい飲み物(白湯・ほうじ茶・生姜入りの飲み物など)を寝る前に飲み、身体を内側から温める
- 腰の少し上、背骨の両わきにある「腎兪(じんゆ)」のあたりを、手のひらで温めるようにさする。ツボ押しは強く押さず、心地よい程度にとどめる
- 朝は起きたらカーテンを開けて光を浴び、できれば白湯を一杯飲む
- 起床時刻だけは、休日も平日の+2時間以内にそろえる
なお、気分の落ち込みが強い、眠れない状態が長く続く、食欲が極端に落ちているといった様子がある学生は、養生の範囲にとどめず、学内の保健センターや学生相談室、医療機関につなぐことが大切です。
まとめ——「治す」より「整える」を学生と一緒に
1限欠席が続く学生は、怠けているのではなく、夜の回復が追いついていないのかもしれません。東洋医学の「腎」と「肝」という見方は、学生を責めずに生活を一緒に見直すための共通の言葉になります。
欠席を「ゼロにする」ことを目標にするのではなく、「少しずつ整える」ことを支える。そのくらいの距離感が、学生にも教職員にも長続きする支援になります。まずは来週、気になる学生に一言、体調を気づかう声をかけてみてください。
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※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
