11月に入り、後期の授業も折り返しを迎えました。学生対応、成績や出欠の確認、会議、学内行事の準備と、気づけば毎日が駆け足で過ぎていませんか。「休日に寝ても疲れが残る」「朝、布団から出るのが重い」「学生の相談に乗っているうちに自分の気力が追いつかなくなった」。そんな声は、学生支援の現場に立つ大学教職員の間で、この時期によく聞かれるものです。
学生の不調に気づき、寄り添うお仕事は、やりがいが大きい一方で、気づかないうちに自分の力をたくさん使っています。この記事では、大学教職員の疲れを東洋医学の視点から読み解き、冬の入口に今日から整えられる養生法をご紹介します。
大学教職員の疲れは「忙しいから仕方ない」?
一般的には、教職員の疲れは「業務量が多いから」「学期末は繁忙期だから」と説明されることが多いでしょう。睡眠不足や運動不足、長時間のデスクワークも原因として挙げられます。検査をしても特に異常が見つからず、「休めば治る」「気の持ちようです」と言われて終わってしまうこともあります。
もちろん、業務の調整や休息はとても大切です。ただ、休んでも抜けない疲れや、気持ちの張りが戻らない感覚は、「頑張りが足りない」わけではありません。あなたの責任ではなく、体の中の力の使い方に偏りが生じているサインかもしれません。
東洋医学で見る大学教職員の疲れ——「腎」と「肝」と気血
東洋医学では、体を動かすエネルギーを「気(き)」、体を養う栄養を「血(けつ)」と考えます。そして冬は、体の奥にある「腎(じん)」の季節とされます。腎とは、腎臓だけでなく、生命力のもとになる力を蓄える働き全体を指す言葉で、いわば体のバッテリーのようなものです。
秋から冬にかけては、この腎に力を蓄える時期です。ところが学期末は、夜遅くまでの業務や睡眠不足で、バッテリーを充電する前に使い切ってしまいがちです。腎が消耗すると、朝のだるさ、腰や膝の重さ、冷え、集中力の低下などが現れやすくなります。
もう一つ大切なのが「肝(かん)」です。肝は気の巡りを調整し、感情の安定にも関わるとされます。学生の悩みを受け止め続けたり、板挟みの調整役を担ったりすると、気の流れが滞る「気滞(きたい)」の状態になり、イライラ、肩こり、ため息の増加、寝つきの悪さにつながります。さらに肝は血を蓄える場所でもあり、消耗が続くと「血虚(けっきょ)」、つまり栄養不足のような状態にもなります。つまり、冬の入口の教職員の疲れは、「腎の力が足りない」ことと「肝の気が詰まっている」ことが重なっている場合が少なくありません。
今日からできる大学教職員の疲れの養生法
特別な時間は不要です。仕事の合間や帰宅後に、無理のない範囲で試してみてください。
腎を温めて蓄える
- 就寝時刻を、いつもより30分だけ早めてみましょう。腎の回復は夜の睡眠で進むとされています
- 腰からお尻のあたりと足首を冷やさないようにします。腹巻きやレッグウォーマーが手軽です
- 黒ごま、黒豆、くるみ、山芋、ねぎなど、体を温め腎を養うとされる食材を食事に1品足してみましょう。コンビニなら、ナッツ類やもち麦入りの味噌汁が使いやすい選択肢です
- 冷たい飲み物を温かいお茶や白湯に替えるだけでも、体の負担は変わります
肝の気を巡らせる
- 会議や面談の合間に、椅子に座ったまま息をゆっくり長く吐く呼吸を3回行います。吐く息を吸う息の倍の長さにするイメージです
- 足の甲にある「太衝(たいしょう)」というツボ(親指と人差し指の骨の間の少し手前)を、気持ちよい強さで10秒ずつ、数回押します。気の巡りを助けるツボとして知られています
- 足裏の中央のやや上にある「湧泉(ゆうせん)」を、お風呂上がりにやさしくさすると、体が温まりやすくなります
- 日が出ている間に10分でも歩き、肩を回して、こわばりをほぐしましょう
職場でできる小さな工夫
学生を支える立場の方ほど、自分のことは後回しになりがちです。ひとりで抱え込まず、保健センターや学生相談室、同僚と情報を共有し、「相談を受ける側が疲れ切らない仕組み」を一緒につくることも、立派な養生です。気分の落ち込みが強い、眠れない日が続くといった状態は、教職員の方ご自身も、産業医や医療機関に相談してください。
「治す」ではなく「整える」という着地
疲れが取れないとき、私たちはつい「もっと頑張って乗り切ろう」と考えがちです。けれど東洋医学の養生は、冬という季節に合わせて、力を蓄え、巡りを整えることを大切にします。学生の不調に寄り添うためにも、まず支える側のあなたの体と心を整えることから始めてみませんか。
完璧を目指す必要はありません。今夜は30分早く布団に入る、足元を温める、深く息を吐く。その小さな積み重ねが、冬を乗り切る力の土台になります。
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※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
