「10月に入ってから、風邪で授業を休む学生が目立つ」「学園祭の準備期間になると、保健センターに来る学生が増える」——後期が本格的に始まるこの時期、そんな実感をお持ちの教職員の方は多いのではないでしょうか。
欠席連絡のメールには「発熱のため」「喉が痛くて」といった言葉が並び、1〜2日で戻ってくる学生もいれば、そのまま欠席が続いてしまう学生もいます。ゼミや部活動では、一人が体調を崩すと周りに次々と広がっていくこともあります。
「風邪くらい」と見過ごされがちですが、後期の早い段階でつまずくと、授業への復帰や単位取得にも影響が出かねません。今回は、大学生の風邪予防を東洋医学の「免疫」の考え方から見直し、大学として何ができるかを考えてみます。
大学生の風邪予防、一般的にはどう考えられているか
一般に、風邪の多くはウイルス感染によるもので、予防の基本は手洗い・換気・十分な睡眠・栄養バランスのよい食事とされています。大学でも、掲示やポータルサイトでの注意喚起、消毒液の設置などが定着してきました。
また、秋から冬にかけては空気が乾燥し、昼夜の寒暖差も大きくなるため、ウイルスが広がりやすく、身体の防御力も落ちやすい時期だと説明されます。
ただ、現場ではこんな疑問も生まれるのではないでしょうか。「同じ教室で過ごしているのに、毎回風邪をひく学生と、まったくひかない学生がいるのはなぜか」。注意喚起だけでは届きにくい、学生一人ひとりの「ひきやすさ」の違いがあるように感じられます。
東洋医学で見る大学生の風邪——「衛気」という身体のバリア
東洋医学では、外から入ってくる寒さや乾燥、病気の原因を「外邪(がいじゃ)」と呼びます。そして、それを体表で防ぐ力を「衛気(えき)」と考えます。衛気は、いわば身体の表面を守る見えないバリアで、現代でいう免疫の働きに近い概念です。
この衛気をつかさどるのが「肺」です。東洋医学の肺は呼吸だけでなく、皮膚や鼻・喉の潤いと防御を受け持っています。秋は肺が乾燥の影響を受けやすい季節で、喉のイガイガや乾いた咳から風邪が始まりやすいのはそのためです。
さらに、衛気の材料は毎日の食事から作られます。食べ物を消化してエネルギーに変えるのが「脾(ひ、消化吸収の働き)」です。朝食抜き、コンビニのパンだけの昼食、夜遅いカップ麺——こうした食生活が続くと脾が弱り、「気虚(ききょ、気の不足、いわばガス欠状態)」になって衛気が作られにくくなります。
もう一つ見逃せないのが夜更かしです。東洋医学では、夜は身体が気血を補い、蓄える時間と考えます。学園祭の準備、レポート、アルバイト、スマートフォンで睡眠が削られると、生命力の土台である「腎(じん)」が消耗し、防御力全体が下がっていきます。
つまり、風邪を繰り返す学生は「肺の乾き」「脾の疲れ」「腎の消耗」が重なり、衛気というバリアが薄くなっている状態と読み解けます。秋の欠席は、生活リズムの乱れを知らせるサインでもあるのです。
大学生の風邪予防のために、大学ができること
大学・教職員ができる支援策
- 声かけは「体調」と「生活」をセットで:風邪明けの学生に「もう大丈夫?」だけでなく、「最近ちゃんと眠れてる?」「朝ごはんは食べられてる?」と一言添えると、生活の乱れに気づくきっかけになります。
- 学園祭・イベント準備期の配慮:実行委員やサークルの中心学生は無理をしがちです。準備の最終下校時刻を守るよう呼びかけたり、担当教員から「休むのも準備のうち」と伝えたりするだけでも効果があります。
- 学食での「温かい汁物」企画:秋から冬にかけて、根菜の味噌汁や生姜入りスープ、白きくらげや梨など肺を潤す食材を使ったメニューを「風邪予防週間」として打ち出すと、食生活への関心を高められます。
- 健康講座・ポータルでの発信:手洗い・換気に加えて「睡眠」「朝食」「乾燥対策」を一枚にまとめたセルフケア案内を配信するのも一案です。
- 連携の仕組みづくり:欠席が続く学生の情報を、教務・学生支援・保健センターがゆるやかに共有できると、早めのフォローにつながります。
学生に伝えられるセルフケア
- 首元を冷やさない:首の後ろには「風門(ふうもん)」というツボがあり、東洋医学では風邪の入り口とされます。朝晩の寒い時間帯はストールやパーカーのフードで首元を守るよう伝えましょう。
- 朝の一杯の白湯と温かい朝食:コンビニでも、おにぎりに温かい味噌汁やスープを組み合わせるだけで脾が働きやすくなります。
- 0時までに布団に入る:完璧でなくてよいので、週の半分でも早めに寝る日をつくることを勧めます。
- 喉と鼻の潤いを守る:マスクやこまめな水分補給、加湿で肺の乾燥を防ぎます。
なお、風邪をきっかけに気分の落ち込みが強くなったり、欠席が長く続いたりしている学生については、学内の保健センター・学生相談室や医療機関につなぐことが大切です。高熱が続く、息苦しさがあるなどの場合も、早めの受診を促してください。
まとめ——風邪を「防ぐ」より、バリアを「整える」
大学生の風邪予防というと、手洗いやマスクといった「外から入れない」対策に目が向きがちです。東洋医学の視点を加えると、睡眠・食事・乾燥対策によって、学生自身の衛気というバリアを「整える」ことが見えてきます。
教職員の何気ない一言や、学食の一杯の汁物が、学生のコンディションを守る支えになります。風邪を「治す」ことより、ひきにくい身体に「整える」ことを、キャンパス全体で後押ししていきたいですね。
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※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。

