「さっきまで食べていたのに、急にごはんを口にしなくなった」「野菜は全部よけてしまう」「一口食べて遊びはじめる」。せっかく作った食事を残されると、「私の作り方が悪いのかな」と落ち込んでしまいますよね。子どもが食べない悩みは、初めての子育てでもっとも多い不安のひとつです。まず最初にお伝えしたいのは、あなたのせいではないということです。
子どもが食べないのは「困ったこと」?一般的な考え方
小児科や栄養の分野では、幼児期の食べムラや偏食は成長の過程でよく見られるものと考えられています。遊び食べ、少食、好き嫌いは、2〜5歳ごろに多く、成長曲線に沿って体重が増えていれば、様子を見ることが多いとされています。
また、子どもの胃は小さく、一度に食べられる量が限られます。大人と同じ感覚で「1食でこれだけ」と考えず、1日〜1週間のトータルで見るとバランスがとれていることも少なくありません。ただし、体重が増えない、水分もとれない、ぐったりしているといったときは別です。その場合は早めに小児科へ相談してください。
東洋医学で見る「子どもが食べない」のしくみ——「脾(ひ)」は育ち盛りの消化エンジン
東洋医学では、食べ物を消化吸収して、気(エネルギー)や血(栄養)に変える働きを「脾(ひ)」と呼びます。脾は、体内の消化エンジンのようなものです。
子どもの脾は「まだ育ちかけ」
東洋医学では、子どもは「脾が未熟」と考えます。身体は大きく成長するのに、消化のエンジンはまだ小さく、疲れやすいのです。そのため、食べすぎ、冷たいもの、甘いもの、生活リズムの乱れなどで、すぐに脾が弱ってしまいます。脾が疲れると、食欲が落ち、おなかが張り、便の調子も乱れます。
食べない理由は一つではありません
- 脾の疲れ(脾虚):気が足りないガス欠状態。疲れやすい、顔色が白っぽい、食が細い、軟らかい便が出やすい
- 食べ物の滞り(食積):食べすぎや間食で胃腸が詰まった状態。口臭、おなかの張り、舌に白い苔が厚くつく
- 気持ちのこもり(肝の気の滞り):環境の変化や緊張で気の巡りが悪くなり、食欲が出ない。イライラしやすい、かんしゃくが出やすい
秋は空気が乾燥して肺が疲れやすく、肺と脾はつながっているとされます。そのため、夏の冷たいものの疲れが残った脾に、秋の寒暖差が重なって、食欲が落ちるお子さんも多い季節です。また、「食べない」背景には、保育園や幼稚園で緊張しているなど、心の疲れが隠れていることもあります。
今日からできる、親子のやさしい養生法
食べさせようと頑張るほど、食卓はピリピリしてしまいます。「食べさせる」より「脾を休ませて、食欲が戻るのを待つ」という発想に切り替えてみましょう。
食事の工夫
- 温かく、消化のよいものを少量ずつ:おかゆ、うどん、野菜をやわらかく煮たスープなど
- 脾をいたわる食材をやさしい味で:かぼちゃ、さつまいも、にんじん、じゃがいも、米、山いも(すりおろして)
- 冷たい飲み物やジュース、おやつの食べすぎを控え、おやつは時間と量を決める。食前の1〜2時間はあげない
- 食べなくても叱らない。20〜30分で切り上げ、「ごちそうさま」で終わりにする
生活のリズムを整える
- 日中に思いっきり体を動かすと、おなかが空きやすくなります。公園遊びや散歩がいちばんの食欲アップです
- 朝は同じ時間に起きて、光を浴びる。リズムが整うと脾の働きも安定します
- 食卓ではテレビを消し、親が楽しそうに食べる姿を見せる。「食べなさい」より、一緒に「おいしいね」が効きます
親子のスキンシップ(やさしくなでるだけ)
おへその周りを、手のひらで時計回りに「の」の字を描くようにやさしくなでます。手が冷たくならないよう、先に両手をこすり合わせてから。1回1〜2分、強く押さずに、おなかを温めるつもりで。お風呂上がりや寝る前のスキンシップとして取り入れてみてください。親の手のぬくもりは、子どもの安心にもつながります。
親自身の脾もいたわって
食べない子の相手をするうちに、親の脾も疲れてしまいます。ごはんの時間にイライラしたら、深呼吸をして「今日はこれで十分」と自分に言ってあげてください。親の気持ちがゆるむと、子どもの食卓も不思議とやわらぎます。
こんなときはすぐ小児科へ
次のような様子があるときは、養生で様子を見ず、すぐに小児科を受診してください。
高熱が続く、ぐったりして元気がない、水分がとれない・おしっこが出ない、嘔吐や下痢をくり返す、体重が減ってきた、顔色が悪い、のどの痛みや腹痛を強く訴える、などです。迷ったときは、受診してかまいません。乳幼児へ漢方薬を使う場合は、必ず小児科医や漢方に詳しい医師・薬剤師に相談してください。自己判断での使用は避けましょう。
まとめ——「食べさせる」より「整えて待つ」
子どもが食べない時期は、脾が成長しているサインでもあります。東洋医学では、無理に治そうとするのではなく、温かい食事・規則正しいリズム・安心できる食卓で、子ども本来の力が整うのを待つと考えます。今日は一口食べられたら花丸。完璧なごはんより、笑顔の食卓を大切にしてください。あなたは十分に頑張っています。
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※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
