足の裏が痛い・芍薬甘草湯が効かない方へ——中医学が見る「腎」との深い関係

「挫いた覚えもないのに、朝の一歩が踏み出せないほど足の裏が痛い」「整形外科でレントゲンを撮ったけれど異常はないと言われた」「処方された芍薬甘草湯を飲むとその場はラクになるけれど、しばらくするとまた同じ場所がうずく」——こんな経験はありませんか。先日、当ブログの問答コーナーにも、まさにそんなお悩みが届きました。原因不明と言われる足底の痛み、そして「効くと聞いて飲んだ漢方が、思ったほど効いてくれない」というもどかしさ。今日はこの悩みを切り口に、なぜ薬を飲んでも痛みが戻ってくるのか、その理由を東洋医学の視点から一緒に考えてみたいと思います。

整形外科で芍薬甘草湯が処方される理由

整形外科で足裏の痛みを訴えると、まず行われるのはレントゲン検査と問診です。骨折や明らかな炎症がなければ、「足底筋膜炎」「種子骨炎」、あるいは「加齢性の変化」と説明され、消炎鎮痛剤や、筋肉のけいれんを抑える芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が処方されることが多いでしょう。

芍薬甘草湯は、こむら返りや筋肉の急な痛みに対しては確かに即効性のある優れた処方です。私自身、夜中のふくらはぎのつりには何度も助けられてきました。ただ、足底の慢性的な痛みに対しては、飲んだその時はやわらいでも、しばらくするとまた同じ場所がうずき出す——そう感じている方が、実は少なくないのです。なぜでしょうか。

なぜ芍薬甘草湯では「対症療法」になってしまうのか

神山先生に伺うと、これは「ものさし」の問題だと言われます。芍薬甘草湯は、筋肉の異常な緊張という「症状」をやわらげるための処方で、いわば痛みの“火”を消す消火器のようなもの。けれど、なぜ何度も同じ場所に火が出るのか、その“燃料”には触れない。だから、しばらくするとまた燃え出してしまう。これがいわゆる対症療法の限界です。

中医学では、足の裏、とくにかかとや土踏まずの慢性的な痛みを、多くの場合「腎虚(じんきょ)」のサインと捉えます。「腎は骨を主(つかさど)り、その華(はな)は髪、その通ずるところは耳と踵(かかと)」——腎は西洋医学の腎臓とは違い、生命力の貯金箱のような概念です。40代を過ぎる頃から少しずつ目減りし、立ち仕事、慢性的な疲労、冷え、過労、睡眠不足などで早く減ります。この“貯金”が減ると、骨を養い潤す力が落ち、かかとや足底にじわじわと痛みが出てきます。

さらに現代の食生活——甘いもの、乳製品、揚げ物、冷たい飲み物——は体内に「湿熱(しつねつ)」をため込みます。湿と熱は重い邪気なので、身体の一番下、つまり足の裏に降り、そこで滞って痛みを増幅させます。芍薬甘草湯はこの“燃料”——腎虚や湿熱——にはアプローチしないため、どうしても対症療法に留まってしまうのです。

足裏の痛みに、今日からできる養生法

そこで、ご家庭で今日から始められる「燃料を減らす養生」を四つご紹介します。

1. 湧泉(ゆうせん)のツボ刺激 足裏の中央よりやや上、足の指を曲げると一番くぼむ場所。ここはまさに腎経の入口です。お風呂上がりに親指で三十秒、左右両方をじんわり押すだけでも、下に滞った気の流れが変わります。神山先生に教わった裏ワザとして、クローブ(丁香)の粒を絆創膏で湧泉に貼り付けて寝るという方法も。膝痛に劇的に効いたという例があるそうです。
私はいつも、キッチンペーパーを折って黒酢(静置発酵で作られた黒酢の方が効果は大きいです)を湿らせて湧泉の辺りに当ててラップでぐるぐる巻きにして湿布します。
包帯でも良いのですが、お酢の匂いは強烈なのでラップで蓋をしています。

Sole of a foot with Japanese acupressure points marked, including Yongquan point

2. 黒酢の足浴 洗面器に少し熱めのお湯と、黒酢を大さじ二、三杯。十五〜二十分浸かるだけで血流が改善し、湿熱を散らします。テレビを見ながらでもどうぞ。

3.「黒い食材」を意識する 中医学では黒い色の食べ物が腎を補うとされます。黒豆、黒ごま、黒きくらげ、くるみ。ごはんに黒ごまをふる、味噌汁に黒きくらげを入れる——それくらいの小さなことから。骨つき鶏を弱火で三十分煮込んだスープも、腎精をしっかり補ってくれます。

4. 避けたほうがいいもの 冷たい飲み物、アイスクリーム、生野菜サラダ、過度な運動。とくに「身体に良いから」とサラダばかり食べている方は、知らず知らず脾と腎を冷やしているかもしれません。今は休養が必要な時期だと考えてください。

痛みが始まってから36時間は、固形物を体に入れないことも重要です。
腎臓を休めてあげること、壊れた細胞の自己修復を促すことで、上記4項目の効果が出やすくなります。

二週間続けても痛みが引かない場合は、八味地黄丸(はちみじおうがん)など腎陽を補う処方が選択肢に入ります。ただし、まずは生活の見直しから。漢方は「証(しょう)」に合わせて選ぶものなので、本格的に飲むなら漢方に詳しい医師に相談されるのがよいでしょう。

まとめ——「治す」ではなく「整える」へ

痛みは、消すべき敵ではなく、身体からの便りです。芍薬甘草湯がいまひとつ効かないというのは、そもそも筋肉だけの問題ではなく、「腎の貯金が減ってきていますよ」というお知らせなのかもしれません。対症療法はもちろん大切ですが、それと並行して、毎日の食事と暮らし方を少しずつ整えていく。「治す」のではなく「整える」——その積み重ねが、来年の足裏を、五年後のあなた自身の歩みを、確かに変えていきます。


※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。現在の治療を自己判断で中断せず、必ず主治医にもご相談ください。

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