後期が始まって留学生の元気がない?——現場で気づく「なんとなく不調」
「後期に入ってから、ゼミの留学生が授業中に眠そうにしている」「学食であまり食べていない様子が気になる」「咳が続いていて、表情も暗い」——。国際交流課、研究室、チューターなどの現場では、この季節にそんな小さな変化に気づく機会が増えます。
秋は日照時間が短くなり、朝晩の冷え込みと乾燥が一気に進みます。母国との気候の違いに加えて、食文化、生活リズム、言葉の壁が重なるため、留学生は「環境の変化の合計」を、日本人学生以上に大きく受け止めていることが少なくありません。しかも本人は「大丈夫です」と答えがちで、不調が表に出にくいのも悩ましいところです。
一般的には「文化的ストレス」と「生活環境の変化」と考えられています
西洋医学や学生支援の分野では、留学生の不調は「異文化適応のストレス(いわゆるカルチャーショック)」と整理されることが多くあります。留学直後の高揚感のあとに、疲れや孤立感が出てくる時期があるとされ、後期の始まりはちょうどその波と重なりやすい時期です。
あわせて、慣れない食事、一人暮らし、アルバイトと学業の両立、日照の減少による気分の変化なども要因として挙げられます。そのため支援は、相談窓口の案内や生活オリエンテーション、日本語・学習面のサポートが中心になります。もちろん大切な取り組みですが、「検査では異常がないのに、なんとなく調子が悪い」という身体の状態は、見落とされやすい部分でもあります。
東洋医学の視点:「脾」「肺」「腎」から環境の変化を読む
東洋医学では、人の身体は季節や環境と響き合っていると考えます。気候も食べ物も変わる留学生の不調は、五臓(身体の働きを支える5つのグループ)のうち、とくに次の3つで読み解くことができます。
食事の変化で疲れる「脾(ひ)」
脾は、食べ物から気(エネルギー)と血をつくる消化吸収の司令塔です。慣れない食材や味付け、食べる時間帯の変化は脾に負担をかけます。脾が疲れると、食欲の低下、軟便、だるさ、頭が働かないといった状態(脾気虚、いわばガス欠状態)になりやすくなります。また脾は「思い悩む」ことでも消耗するとされ、言葉や人間関係の緊張が続く留学生には、心身の両面から負担がかかります。
乾燥と冷えに弱い「肺(はい)」
肺は呼吸や皮膚を守る働きを担い、秋の乾燥にもっとも影響を受ける臓です。湿度の高い地域や温暖な地域から来た学生は、日本の秋の乾燥で、乾いた咳、喉の痛み、肌のかさつきが出やすくなります。肺の守りが弱まると、風邪もひきやすくなります。
長旅と夜更かしで減る「腎(じん)」
腎は生命力の貯蔵庫で、睡眠や冷えへの強さとも関わります。時差、母国との連絡による夜更かし、アルバイトによる睡眠不足が続くと腎が消耗し、足腰の冷えや朝の起きにくさとなって現れます。
この3つの臓の疲れが重なると、「食べられない、眠れない、咳が出る、気力が出ない」という、国籍を問わず共通する不調の形になります。つまり留学生の不調は、性格や努力不足ではなく、環境の変化に身体が追いついていないサインとして見ることができます。
大学・教職員ができる支援策と、学生に伝えられるセルフケア
大学・教職員ができる支援策
気づきのポイントを共有する。 欠席の増加だけでなく、「食堂で量が減った」「咳や鼻水が長引いている」「朝の授業で眠そう」といった変化も、早期のサインです。研究室やチューターの間で、こうした気づきを共有しておくと、早めの声かけにつながります。
声かけは「具体的で小さな質問」から。 「大丈夫?」では「大丈夫です」と返されてしまいがちです。次のように、答えやすい質問を試してみてください。
- 「最近、ごはんはおいしく食べられていますか」
- 「日本の秋は乾燥しますね。喉や肌は平気ですか」
- 「夜はよく眠れていますか」
食と交流の場をつくる。 学食で母国の味に近い汁物や温かいメニューを取り入れる、国際交流イベントで「あたたかい鍋」や「薬膳風スープ」を囲む、健康講座を多言語のやさしい日本語で行うといった工夫は、食事面と孤立感の両方にやさしく働きます。
学内の窓口につなぐ。 気分の落ち込みが強い、眠れない状態が長く続く、食べられない日が続くといった場合は、教職員だけで抱え込まず、保健センターや学生相談室、医療機関につなぐことが大切です。通訳や言語対応の可否も、事前に確認しておくと安心です。
学生に伝えられるセルフケア
留学生に紹介しやすい、お金も手間もかからない方法です。
- 温かい汁物を一杯: 味噌汁やスープなど、温かいものを一日一回。ネギやショウガ、大根は、身体を温めて脾を助けます。
- 喉を潤す: 白湯や、梨・リンゴ・はちみつなどの優しい甘みで肺を潤します(コンビニや寮のキッチンでも可能です)。
- 足元を温める: 靴下を重ねる、寝る前に足湯をする。腎を冷やさない基本です。
- ツボを押す: 手の甲の親指と人差し指の間にある「合谷(ごうこく)」を、息を吐きながらゆっくり押します。親指の付け根近くの「太淵(たいえん)」も、肺を整える手首のツボです。痛気持ちいい程度で十分です。
まとめ——「適応させる」のではなく、「整える」支援を
留学生の体調管理は、がんばって環境に適応させることではなく、身体が環境になじむ時間を支えることです。食事、乾燥、睡眠という3つの土台をやさしく整えるだけで、見える景色が変わる学生もいます。大学の仕組みと、ささやかな一杯の温かさ。その両方が、学生を支えます。
気分の落ち込みが強い、長く続くなどの場合は、迷わず学内の保健センター・学生相談室や医療機関につないでください。
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※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
