後期に欠席が増えた学生への声かけ——東洋医学で読み解く「秋の気分の落ち込み」と大学ができる学生支援

後期の授業が始まって2〜3週間。前期はきちんと出席していた学生が、急に遅刻や欠席を繰り返すようになった。課題の提出が止まり、ゼミで話しかけても反応が薄い。メールを送っても返事がない——。欠席が増えた学生に、どんな声かけをすればいいのか。

学生支援や教務、ゼミを担当されている先生方なら、毎年この時期に同じような場面に出会っているのではないでしょうか。「夏休みで生活リズムが崩れただけ」と様子を見るべきか、踏み込んで声かけをするべきか。判断に迷うことも多いと思います。

実は、東洋医学では秋は「気持ちが沈みやすい季節」と考えられています。今回は、後期開始のこの時期に学生のコンディションがどう変わりやすいのか、そして大学・教職員として何ができるのかを、養生の視点から整理してみます。

後期に欠席が増えた学生——一般的に考えられている原因

後期の始まりに欠席が増えた学生の背景として、一般的には次のようなことが挙げられます。

  • 約2か月の夏休みで生活リズムが夜型に崩れ、朝起きられなくなる
  • 前期の成績が返ってきて、自信をなくしたり単位の不安を抱えたりする
  • 3年生では就職活動、4年生では卒業研究のプレッシャーが本格化する
  • 日照時間が短くなることで気分が落ち込みやすくなる

医学的には、うつ状態や季節性の気分の変化、睡眠リズムの障害などが背景にあることもあり、状態によっては専門的な治療が必要です。大学としては、保健センターや学生相談室へ早めにつなぐことが何より大切です。

そのうえで、まだ受診や相談をするほどではない「なんとなく調子が出ない」段階の学生に、どう関わるか。ここで東洋医学の見方がひとつのヒントになります。

東洋医学で見る秋——「肺」と「悲しみ」の季節

東洋医学では、季節と五臓(肝・心・脾・肺・腎)が対応していると考えます。秋に対応するのは「肺」です。

肺は呼吸をつかさどるだけでなく、「気(き:身体を動かすエネルギー)」を全身に巡らせる役割を持っています。そして五臓にはそれぞれ関係の深い感情があり、肺に対応するのは「悲(ひ)・憂(ゆう)」、つまり悲しみや憂い、物思いです。心の疲れが身体のどこに現れるかは、心の疲れは、どこに溜まるのか——身体から見るメンタル不調でも詳しく紹介しています。

秋の乾燥した空気は、デリケートな肺の潤いを奪います。肺が弱ると気を巡らせる力が落ち、気持ちも沈みがちになる。逆に、悲しみや不安が続くと肺の気が消耗する。東洋医学では、この悪循環が秋の「なんとなく元気が出ない」状態を生むと考えます。

さらに、夏休み中の夜更かしは「腎(じん:生命力の貯蔵庫)」を消耗させ、冷たい飲み物やアイスのとりすぎは「脾(ひ:消化吸収の働き)」を弱らせます。脾が弱ると「気虚(ききょ:気の不足、いわばガス欠状態)」になり、朝起きられない、やる気が出ない、という形で現れます(気の不足については「五虚」とは?東洋医学が教える5つの“虚”もあわせてご覧ください)。

つまり、後期に欠席が増えた学生は、「怠けている」のではなく、夏の疲れと秋の季節の影響が重なって、身体のエネルギーが足りなくなっている可能性があるのです。こう捉えると、声かけの仕方も変わってくるのではないでしょうか。

欠席が増えた学生への声かけと、大学・教職員ができる支援

大学・教職員ができる支援策

1. 「欠席3回」を声かけの合図にする
後期開始から3週間ほどは、出席状況の変化に特に注意を払う時期です。LMSの出席・課題提出データなどを使い、欠席が続き始めた段階で担当教員やアドバイザーが声をかける仕組みをつくると、早期に気づきやすくなります。

2. 身体の調子から入る、責めない声かけ
「なぜ来なかったの?」ではなく、「最近、眠れてる?」「朝、起きるのしんどくない?」と身体の調子から聞くと、学生は答えやすくなります。気持ちの問題として聞かれるより、体調の話のほうが口を開きやすいものです。

3. 保健センター・学生相談室へのつなぎ方を共有する
教職員向けに「どんな様子なら相談窓口につなぐか」の目安と、窓口の紹介方法を共有しておきましょう。気分の落ち込みが2週間以上続く、食事や睡眠がとれていない、といった学生は、ためらわず専門窓口へつなぐことが大切です。悩んでいる人に気づき、声をかけ、つなぐ役割については、厚生労働省の「ゲートキーパーになろう!」も教職員研修の参考になります。

4. 学食・健康講座で「秋の養生」を発信する
学食で梨やれんこん、豆腐などを使った「秋の潤いメニュー」を出したり、後期ガイダンスで生活リズムの整え方を短く紹介したりするのも、学生全体のコンディションを底上げする取り組みになります。

学生に伝えられるセルフケア

  • 朝、カーテンを開けて深呼吸を3回:肺に新しい空気を入れ、気を巡らせるスイッチになります
  • 白い食材をひとつ足す:豆腐、大根、れんこん、梨など。コンビニの湯豆腐や梨のカットフルーツでも十分です
  • 冷たい飲み物を白湯や温かいお茶に:弱った脾を休ませます
  • 日付が変わる前に布団に入る:腎を回復させ、朝の起きづらさを軽くします

学生自身が気軽に読めるメンタルヘルス情報としては、厚生労働省の若者向けサイト「こころもメンテしよう」を紹介するのもおすすめです。

まとめ——「怠け」ではなく「季節の揺らぎ」として見る

後期の始まりに調子を崩す学生は、決して珍しくありません。東洋医学では、秋は肺が弱り、気持ちが沈みやすい季節です。夏の疲れが重なれば、朝起きられなくなるのも自然なことです。

欠席が増えた学生への声かけは、責めるためではなく、体調を気づかうためのものです。大切なのは、学生を「治す」ことではなく、学生が自分の調子を「整える」きっかけを大学がつくること。小さな声かけと、相談窓口への確かなつなぎ。それが、学生が後期を乗り切る支えになるはずです。

よくある質問——欠席が増えた学生への声かけ

Q. 欠席が何回続いたら声かけをすべきですか?

明確な基準はありませんが、後期開始直後に2〜3回続けて欠席した段階で、担当教員やアドバイザーから軽く声をかけるのがおすすめです。早いほど、学生も返事をしやすくなります。

Q. 声かけで避けたほうがよい言葉はありますか?

「なぜ来なかったの?」「このままだと単位が危ない」など、理由を問い詰めたり不安をあおったりする言葉は避けましょう。「最近眠れてる?」など体調を気づかう言葉から入ると、学生は話しやすくなります。

Q. 東洋医学の養生は学生支援にどう役立ちますか?

東洋医学では、秋は肺が弱り気持ちが沈みやすい季節と考えます。不調を「怠け」ではなく「季節と体調の揺らぎ」として捉えることで、責めない関わり方がしやすくなり、食事や睡眠など学生自身が取り組めるセルフケアも伝えやすくなります。

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※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。

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