「最近、特別なことは何もないのに、胃がムカムカする」「イライラして眠れない夜が続く」「ふとした瞬間に胸がドキドキする」——4月、新しい環境や人間関係の変化で、こんな不調を感じていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
病院で診てもらっても「ストレスでしょうね」「検査では異常はありません」と言われ、けれど身体は確かに辛い。そんな読者の方からよくいただくご質問が、三つあります。今回はこれらに、東洋医学の養生の視点からお答えしていきますね。「気のせい」と片づけられてしまう不調にも、ちゃんと身体の理由があるのです。
Q1. ストレスがあると、なぜ胃が痛くなるのですか?
西洋医学では、ストレスで自律神経が乱れ、胃酸の分泌過剰や血流の低下が起こると説明されます。診断名としては「機能性ディスペプシア」や「神経性胃炎」と呼ばれることが多いですね。胃カメラを呑んでも炎症や潰瘍は見つからない。けれど胃は確かに痛む——そんな状態です。
東洋医学では、これを「肝気犯胃(かんきはんい)」と捉えます。少し難しい言葉ですが、「肝(かん)」とは感情をコントロールし、気の巡りを司る臓器のこと。ストレスで肝の働きが滞ると、その停滞した気が隣にある「胃」を突き上げてしまう、という考え方です。
肝はのびやかに動きたい性質を持っていて、抑え込まれることを嫌います。我慢、気を遣う日々、言いたいことを飲み込む——こうした生活が続くと、肝の気が暴れ出し、最初に犠牲になるのが消化器なのです。「胃が悪い」のではなく「肝が苦しがっている」と読み替えるところに、養生の入り口があります。
Q2. イライラするとなぜ眠れなくなるのですか?
西洋医学では、交感神経の緊張、コルチゾールの分泌、メラトニンの抑制——というホルモンと自律神経のメカニズムで説明されます。
東洋医学では、「肝鬱化火(かんうつかか)」、つまり溜まった肝の気が熱を持ち、その火が「心(しん)」に飛び火している状態と見ます。心は精神活動と睡眠を司る臓器。ここに肝からの熱が上がってくると、頭は冴え、目は爛々として、布団に入っても考えごとが止まらない——いわゆる「眠ろうとすればするほど眠れない夜」が生まれます。
身体を観察すれば、舌の先が赤い、口や喉が渇く、夢が多い、目が充血する、といった「上半身に熱がこもっているサイン」が出ているはずです。睡眠薬で蓋をするのではなく、まず火を冷ますこと、そして気の出口を作ってあげることが、養生のアプローチになります。
Q3. 不安で胸がドキドキするのは、どう整えればいいですか?
これは「心血虚(しんけっきょ、こころを養う血の不足)」、あるいは「気滞(きたい、気の巡りの詰まり)」のどちらか、または両方が重なっている状態と診ます。
ストレスで食欲が落ち、夜更かしが続けば、血は確実に消耗します。すると心は栄養不足となり、ちょっとしたことで不安に襲われ、動悸が起こる。「気の小さい人」ではなく「心血が足りていない人」というのが、東洋医学の見方です。性格の問題ではなく、栄養と巡りの問題——そう捉え直せると、ずいぶんと気持ちが楽になりますね。
今日からできる、肝と心の養生法
まず深呼吸を意識すること。肝の気を巡らせる最もシンプルな方法は呼吸です。鼻から4秒吸って、口から8秒かけて吐く。これを朝晩5回ずつ。気が動き出します。
次に香りの力を借りる。みかんの皮、ジャスミン、ミント、しそ、セロリ——香りのある食材は肝の気を巡らせる「理気(りき)」の働きを持ちます。お茶に陳皮(みかんの皮)を一片浮かべるだけでも違いますよ。
そして目を休めること。「肝は目に開竅(かいきょう)する」と言われ、目の使いすぎは肝を疲弊させます。寝る一時間前にはスマホを置く。これだけで翌朝の身体は変わります。
夕食には棗(なつめ)と龍眼肉を煮出したお湯を一杯。心血を養い、不安を鎮めるシンプルな処方です。スーパーや中華食材店で手に入ります。
まとめ——「気のせい」ではなく「気の停滞」
ストレスによる不調は、「気のせい」ではなく「気の停滞」です。心を強く持とうとするのではなく、肝の気を巡らせ、心の血を養う。「治す」のではなく「整える」——その小さな積み重ねが、4月の揺らぐ心と身体を、静かに支えてくれます。
今日から一つだけでいい。深呼吸でも、お茶一杯でも、スマホを置く時間でも。始められそうなところから、始めてみてください。
※本記事は東洋医学の考えに基づく養生の知恵を紹介するものであり、医療行為の代替を推奨するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
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